知らなければ損してしまうかも?アルバイトの税金や社会保険

アルバイトで稼いだお金は、すべてそのまま振り込まれるわけではありません。収入が一定額以上になると税金や保険料が発生し、給与から差し引かれます。給与明細を見てびっくりしないためにも、税金や公的な保険の仕組みをしっかり学んでおきましょう。

 

給与に課せられる税金にはどんなものがある?

 

アルバイトで得られる収入を「給与収入」といい、ここには国に納める「所得税」と都道府県や市区町村などの地方自治体に納める「住民税」の2つの税金が課せられます。納める先が違うため金額も別々に計算され、別々に徴収されます。今回は、給与所得以外の所得がないケースに限って見ていきます。

 

 

「所得税」と所得控除

 

「所得税」の計算をするためには、まず、年間の給与収入(年収)から「所得控除」という形で定められた金額を差し引きます。「所得控除」については、アルバイトも含め給与収入を得ている全員が対象のものと、ある一定の基準を満たした場合に控除されるものに分かれます。

すると「課税総所得金額」が割り出されます。それに対して一定の税率「所得税率」を掛け、今度は「税額控除」を差し引くと、所得税額が算出されます。

「所得税率」は、課税総所得金額が多いほど上がる仕組みになっていて、5~45%の間で7段階の税率が適用され算出されます(195万円以下までは5%)。「税額控除」は、所得税額から直接差し引くことができる控除のこと。「所得控除」と比べると、節税効果は非常に大きいのが特長です。ここに該当する控除は、「住宅借入金等特別控除」(いわゆる住宅ローン減税)や株式投資などによる配当金を受け取った時にできる「配当控除」などで、気になる方は国税庁のホームページ(※1)をチェックしてみてください。

 

 

「復興特別所得税」とは?

 

「復興特別所得税」は、東日本大震災の被災者支援に使われる税金として、2037年まで課税される予定です。所得税額に2.1%の税率を掛けた金額が、所得税額と一緒に徴収されます。

 

 

今年の所得をもとに来年納める「住民税」

 

「住民税」は、所得に応じて決まる「所得割」と、各地方自治体が定めた「均等割」という2つで構成されています。「所得割」は、課税(対象)所得に税率を掛けたもの、「均等割」は自治体によって異なるものの、約5000円の固定税額となります。

 

 

「住民税」で注意することが1つあります。「住民税」は、その年の所得にもとづいて算出する「所得税」と違い、前年の所得にもとづいて計算され、それを6月から翌年5月にかけて支払います。昨年はたくさん働いたが、今年は就職活動や家庭の用事などでアルバイトをセーブしたり、無職になったりした場合は、住民税が払えないということにもなりかねませんので、気を付けましょう。

 

 

年末調整と確定申告

 

「年末調整」とは、毎月給与から天引きされている(差し引かれている)所得税と、1年間で従業員が納めるべき所得税を比較し、年末に過不足を調整して差額を還付または納付する作業のこと。アルバイト先の会社が手続きを行ってくれ、12月に支給される給与で調整されます。ただし、利用できる控除があり所得税がもっと少なくすむ場合や、アルバイトを掛け持ちしている場合などは、自分で税務署に申告します。これを「確定申告」と言います。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」(※2)から申告書を作成することが可能です。

 

(※1)国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto321.htm

(※ 2) 確定申告書類等作成コーナー https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/06_2.htm

 

 

アルバイトが加入する保険にはどんなものがある?

 

所得税・住民税とともに、給与から保険料が天引きされることのある、公的な保険が3つあります。確認していきましょう。

 

 

アルバイト先で要件に当てはまると加入義務が発生するのが、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」の3つです。まず、健康保険と厚生年金保険から見ていきましょう。

 

 

健康保険

 

業務外の病気やけがで治療が必要になった時や、休業、出産といった事態に、必要な医療給付や手当を支給する保険。保険料は個人と会社が約5%ずつ負担する。(健康保険組合は組合ごと、協会けんぽは都道府県ごとに異なる)。

 

 

厚生年金保険

 

民間企業の労働者や公務員等が加入する保険で、働けなくなったときに、老齢年金、障害年金、遺族年金が支払われるもの。保険料は、個人と会社が9.15%ずつ負担する。

★アルバイトの「健康保険」と「厚生年金保険」の加入要件とは!?

 

「健康保険」と「厚生年金保険」については、加入条件は同じです。下の1,2の条件をすべて満たすと加入義務が発生します。

 

1. 勤務時間および日数が、フルタイムの正社員の4分の3以上あること

アルバイトの社会保険の加入条件は、フルタイムの正社員の月の労働日数と1週の労働時間が4分の3以上あることが必要です。

2. 年収106万円以上などの5つの条件を満たしていること

 

下記の5つの要件をすべて満たしたアルバイトが対象となります。

(1)1週間あたりの所定労働時間(※1)が20時間以上であること

(2)月額賃金が8万8000円以上であること(年収約106万円以上)

(3)雇用期間の見込みが1年以上であること

(4)従業員が501人以上の会社であること(※2)

(5)学生でないこと(※3)

 

(※1)就業規則などで定められた始業から終業までの時間のこと。

(※2)従業員が500名以下の企業であっても、「社会保険に加入することについて、労使で合意(労働者の2分の1以上と事業者が合意していること)に基づき、管轄の年金事務所に申し出している」がなされていれば、501人以上の要件を満たしているものとします。

(※3)夜間、通信、定時制の学生は対象となります。

最後に、雇用保険について説明します。

 

 

雇用保険

 

「雇用保険」は、万一の失業や、育児・介護休業した際の手当を支給するなど、生活の安定と就職の促進を図ることを目的とした公的保険。「雇用保険」については、下記の2つの要件を満たせば強制加入となります。

 

(1)31日以上の雇用見込みがある

(2)1週間の所定労働時間が20時間以上である

 

上記3つのほか、働く上で重要な公的保険として「労災保険」があります。

 

 

労災保険

 

業務中や通勤中に負ったケガや病気・死亡に対して給付される制度。給付の種類としては、療養や休業、遺族、障害、介護などがあります。アルバイトを含む労働者全員の加入義務がありますが、保険料は、雇用者が全額負担するので、給与からの天引きはありません。

 

 

まとめ

 

税金と保険の話は、もしかすると少し難解に感じられるかもしれません。ですが、一所懸命に働いて稼いだアルバイト代が、一体どのような理屈で何のために差し引かれているのか、知っておいて損はありません。ぜひ一度関心を向けてみてください。

監修:うたしろFP社労士事務所 社労保険労務士/1級FP技能士CFP® 歌代将也

取材・執筆:西谷忠和

イラスト:藤田マサトシ

図版:藤田倫央

編集:波多野友子(ノオト)